2025年1月12日(日)に、習志野演習場において陸上自衛隊 第1空挺団による「降下訓練始め」が行われました。
防衛大臣直轄の陸上総隊に属する日本唯一の落下傘部隊として、侵略や大規模震災など国家の危機に際しては、高い即応能力と機動力をもって落下傘等で降着し、身を挺してあらゆる任務を果たすことが求められている。
この記事では、令和7年 降下訓練始め(NYJIP25)について紹介します。

後半では野宴をレポするよ。
降下訓練始めとは
陸上自衛隊唯一の落下傘部隊「第1空挺団」が、落下傘による降下およびヘリコプターを使用した空中機動作戦を展示し、降下訓練の安全を祈願する年頭行事です。



1969年に部隊内で実施された「開傘祈願祭」が始まりとされています。
1974年から一般公開され第1空挺団に対する理解と信頼の促進に一役買っており、近年においては同盟国や同志国との連携強化をアピールする場ともなっています。
今年は11カ国もの空挺部隊が参加。
- アメリカ
在日米陸軍 / 陸軍第11空挺師団 / 第82空挺師団 / 海軍部隊及び在日海兵隊 第3海兵偵察大隊 / 第374空輸航空団 - イギリス
陸軍第16空中強襲旅団 - オーストラリア
陸軍空挺学校 - カナダ
陸軍先端研センター - フランス
陸軍ニューカレドニア海外複合連隊 - ドイツ
陸軍第1空挺旅団 - オランダ
陸軍第11空中強襲旅団 - イタリア
陸軍フォルゴア空挺旅団 - ポーランド
陸軍第6空挺旅団 - フィリピン陸軍
- シンガポール陸軍
同盟国であるアメリカ以外は、同志国という繋がりです。
今回から英語表記の訓練名が追加され、「New Year Jump in Indo Pacific 25」の頭文字から「NYJIP25」と通称されています。
国内からの参加部隊は以下のとおりです。
- 富士学校
- 第1師団
- 第1ヘリコプター団
- 中央即応連隊
- 国際活動教育隊
- 東部方面航空隊
- 航空自衛隊 航空支援集団
当日の流れ
- 10:10 空挺団長および団最先任上級曹長の降下
- 10:15 防衛大臣臨場
- 10:20 自由降下
- 10:25 空挺団指揮官等降下及び同盟国・同志国指揮官等降下
- 11:00 空挺作戦およびヘリボーン作戦1による島嶼への緊急展開・奪回、他国軍の来援
- 12:20 らっぱ吹奏・飛行展示
- 12:45 空挺徽章交換式
- 12:55 防衛大臣訓示
- 14:00 野宴
第1空挺団長の降下からスタート
第1空挺団長・若松純也陸将補が先陣を切ってCH-47から降下し、第1空挺団最先任上級曹長・中村健作准陸尉が続きます。


その後、中谷元防衛大臣が臨場。


空挺教育隊による自由降下が行われ、空中にて日本国旗と空挺団旗が掲げられました。




指揮官降下
第1空挺団の各部隊指揮官や、参加国の空挺団長および団最先任上級曹長による降下を実施。




第1空挺団が主に使用している日本製の13式空挺傘主傘で降下する国が多い中、目に留まったのが米陸軍の米国製T-11落下傘。



シルバーに輝く方形の傘体が特徴的。







米軍で1955年以来使用されているT-10の後継落下傘として、2008年からT-11の配備が開始されました。
降下速度が5.8 m/sまで低下し、降着時の衝撃が軽減。降下員が怪我をしにくい仕様にアップデートされています。
降下後、風下の方向に落下傘が流れるよう設計されているため、海外の広大な降下場で、大量かつ一挙に降下させるのに適しています。
地上訓練展示
島嶼防衛を想定したシナリオ型の訓練が行われました。
習志野演習場を島に見立て、陸上自衛隊、海上自衛隊および航空自衛隊による統合作戦ならびに同盟国・同志国軍との協同作戦により、上陸侵攻した敵部隊を第1空挺団が中心となって奪回・確保するという内容です。
事前潜入部隊の自由降下
事前潜入部隊が、降下方式ヘイロウ2により対地高度約1300mから飛び出し、約10秒間(距離にして300mほど)自由落下したのちに落下傘を開き滑空。


目標点に降着後、安全な地域へ移動し、衛星通信を使い遠く離れた大隊本部に「降下場地域の敵状等」について報告します。
昼間は潜伏して敵を監視し、夜間に地形や植生を活用し敵地に潜入して情報収集を実施。
敵状解明後は、統合火力を誘導するにあたり、第1空挺団主力の降下を妨害する敵の対空火器等を排除するとともに降下誘導の準備を行います。
事前制圧
事前潜入部隊の近接戦闘
狙撃手を乗せた東方ヘリ隊所属UH-1J5が進入。
UH-1Jから飛び降りた狙撃手は、速やかに潜入して警戒監視を行います。



狙撃手が携行している対人狙撃銃は、遠距離の人員目標に対して精密な射撃を行うことができます。
潜伏していた敵の偵察部隊と近接戦闘を行う狙撃手。
格闘技術等を駆使して対処し、偵察および狙撃任務を継続します。
選抜者による空挺降下
順番に進入してきた2機。
- 在日米空軍第374空輸航空団C-130J輸送機
- 航空自衛隊第1輸送航空隊C-130H輸送機
両機から降下するのは、全国から選抜された基本降下課程を修了している隊員たちです。









ヘリから次々と降下するのが圧巻!
降着戦闘
集結した空挺部隊が戦闘展開を開始。
隊員相互に援護体制を取り、分散警戒を意識しながら目標地点に進出します。
降着直後は部隊として組織化されておらず、戦闘力の発揮に制限を受けるため、迅速に行動し、組・分隊・小隊・中隊と逐次集結規模を拡大し敵を制圧していきます。
ヘリボーン部隊の上陸
AH-1SおよびUH-1Jが、事後降着するヘリボーン部隊を援護するため進入。


- 12.7mm重機関銃の射撃により敵が離脱
- CH-47 2機が進入。搭乗している普通科隊員がリペリングにより迅速に卸下し地上部隊に戦闘加入する
- 84mm無反動砲6が敵偵察部隊の一部を撃破
- AH-1Sに援護されたCH-47が進入。搭乗している特科隊員はエキストラクションロープで迅速に卸下し、事後120mm迫撃砲7及び高機動車を掌握して射撃準備を行う
- 敵の射撃により、一度に多くの負傷者を出さないよう分散し、120mm迫撃砲及び高機動車を安全に掌握するために警戒態勢を取る
- 81mm迫撃砲小隊が搭乗したCH-47および120mm迫撃砲・高機動車を吊り下げたCH-47 2機が進入。降着した81mm迫撃砲小隊は、射撃位置に迅速に移動し射撃準備を開始
- AH-1S及びUH-1Jに援護され、中距離多目的誘導弾8を搭載したCH-47が進入。降着後、射撃準備を開始
- UH-1J及びAH-1Sは事後の任務に移行するため離脱
- 誘導弾により大破した車両から下車して射撃を開始した敵を、81mm迫撃砲及び120mm迫撃砲が撃破








敵の射撃を受け負傷した2名の隊員を搬送するため、第一線部隊がCH-47を要請する場面もありました。



負傷者は無事ヘリに収容され一安心。
こちらの射撃により自己位置を評定された可能性があるため、81mm迫撃砲小隊は速やかに陣地変換を実施しました。
主力の上陸
90式戦車及び16式機動戦闘車で増強された即応機動部隊が展開します。


- 16式機動戦闘車及び火力を発揮した援護の元、戦車を含めた増援部隊主力が引き続き展開し、空挺部隊と提携
- 敵機動打撃部隊が反撃を続けている中、AH-1S 2機が進入
- 攻撃準備を完了した増援部隊は機動力と火力を発揮し、敵機動打撃部隊を殲滅
- 火力戦闘部隊は、より遠方の敵を射撃するため陣地変換を開始
- 空挺部隊は引き続き同地を確保し、増援部隊はさらに戦果を拡張するため追撃を実施
来援した同盟国・同志国軍による空挺降下
同盟国・同志国軍が搭乗しているアメリカ空軍のC-130Jと航空自衛隊C-130Hが進入。


1番機から4番機にかけて、同盟国・同志国軍の代表者が空挺降下を実施。






来援した同盟国・同志国軍によるヘリボーン降下
同盟国・同志国軍が来援のため搭乗しているCH-47 5機が進入。


着陸したヘリから降りた各国部隊が、空挺団と提携するために習武台の目標線をめざして前進します。




合流した同盟国・同志国軍の隊員と第1空挺団の隊員が連携し、地点指示および事後の作戦について調整、説明を行い、協同して作戦を遂行するというところで訓練展示が終了となりました。
空挺隊員のナレーション


各国部隊が国旗を掲げるラストシーンとともに流れたナレーションが印象的だったため、紹介します。
陸上自衛隊は、「今まさに戦って勝てる」そして「将来にわたって戦って勝てる」強靭な陸上自衛隊の創造を実現するため、陸上防衛力を抜本的に強化しています。
そのような中、第1空挺団は常に国民とともに存在し、あらゆる困難な状況を克服しつつ、与えられた任務を必成していきます。
今日、我々の流す汗が、この先、我が国の生存と安定に直結し、ひいてはこの美しい国、日本を守るという矜持の元、日々厳しい訓練に励み、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努めていくよう邁進してまいります。
今回のような訓練を重ね、一人ひとりの能力を向上させれば、有事の際、多国籍軍が編成されたときに実力を遺憾なく発揮できるでしょう。



もちろん何も起こらないのが一番です。
訓練展示後は、空挺徽章の交換が行われました。








曇天の肌寒い日でしたが、多くの一般市民で賑わっていました。
コールサインの紹介
訓練展示で使用されていたコールサインについて紹介します。
コールサインとは、管制官と操縦士が無線でやり取りする際の呼出符号のことです。
今回登場した5つを以下にまとめました。
機種 | コールサイン |
---|---|
CH-47JA | キャリアー |
AH-1S | アタッカー |
UH-1J | ハンター |
C-130H | キャメル |
C-130J | カントー |
実際の使用例はこちら。



こちら、アタッカー。
目標確認。
目標捕捉。
ミサイル発射!
イベントなどで耳にする機会もあるかもしれません。この機会にぜひ覚えてみてください。
野宴
防衛・駐屯地モニターも、降下訓練始めの終了後に開催される「野宴」に参加することができます。
参加費は一人7,000円です。


モニターと協力会
自衛官から本人かどうかのチェックを受け着席。
「上着を脱ぐようでしたら袋を持ってきます」と言っていただきましたが、寒空の下コートを失ったら一瞬で風邪を引きそうなので遠慮しました。


案内された席には、「ウェブライター 桐山水稀様」と書かれた紙が。
社名が書かれていたモニターの方もいらしたようで、「自衛隊と取引しているみたいだ」と笑っておられました。
同じテーブルには、防衛・駐屯地モニター以外の方々も。



ならきょう、記念撮影に行きます。



奈良教?
あ、習志野自衛隊協力会の略か……!
防衛モニターになって初めて自衛隊協力会の存在を知った筆者。
会員男性に入会の経緯をお聞きしたところ、このように話してくださいました。



協力会には父親が入会していて、それを継ぐ形で自分も入った。
息子が小さいうちは親子でよく降下訓練始めに来ていたが、今年久々に訪れた。
「勤め先の会社が入会しているから必然的に自分も」という方もいらっしゃるようです。
家族や会社ぐるみで応援してくれている協力会会員の存在は、自衛隊にとって心強い味方となっているのでしょう。
ひときわ賑やかなエリア
開始までまだ時間がありましたが、後ろのほうから「かんぱーい!」という声が。
外国語的なイントネーションに思わず振り向けば、イギリス人やアメリカ人たちが瓶ビールをラッパ飲みしていました。
筆者の背後では国際色豊かな光景が繰り広げられていたのです。





その後、なぜか腹筋を始めるイタリア人も。
陽気だなあ。
開始前の腹ごしらえ
隊員の方から先にお弁当を食べるよう声をかけられ、お言葉に甘えました。




熱々の汁物を席まで持ってきていただき、おかげさまで冷えきった体が温まりました。
程よく薄味で飲みやすかったです。


乾杯と焼肉
食事を始めてから10分ほど経ったところで、若松空挺団長が壇上に上がられました。


鏡開き後、焼肉がスタート。


前半は牛肉、後半はラム肉。タレも2種類用意してくださっていました。
筆者は牛肉を2枚いただきましたが、柔らかくて美味しかったです。


ちなみに、お肉と野菜は隊員の方が焼いてくださいます。


写真を撮っていいかお聞きしたら、マスクを外してくださるというサービスぶり。
寒い中、美味しいお肉を提供してくださりありがとうございました!
歌い継がれる「空の神兵」
お開きに近づいた15時25分ごろ、「空の神兵」を斉唱することに。


日本陸軍の落下傘部隊が、オランダ領東インド(現インドネシア)スマトラ島南部のパレンバンを奇襲攻撃し石油を確保。
当時の活躍をたたえた軍歌が「空の神兵」です。




まとめ
ロ朝の軍事的な連携強化、強まる中国の海洋進出、ロシアによるウクライナ侵攻など、北朝鮮、中国、ロシアといった周辺国の軍事的脅威が急速に高まっています。
インド太平洋地域を取り巻く安全保障の環境が厳しさを増している中で、我が国の平和と安全を維持するには、多国間との連携強化を図ることが極めて重要であり、その緊密さを世界へ誇示するのが抑止に繋がるともいえるでしょう。


正門へと歩を進め、振り向けば自衛隊の車。
ふと思い出したのは、防衛モニターの委嘱式で若松空挺団長がお話していた「国のために戦う意識が日本は最下位」について。
「世界価値観調査」(2017年~2020年)の結果によれば、「もし戦争が起こったら国のために戦うか」との質問に対する「はい」という回答の比率が、日本は13.2%と79カ国中、世界最低。「いいえ」は48.6%と6位、「わからない」は8.1%と世界で最も大きい値。
第二次大戦の敗戦国かつ、日本国憲法が戦争放棄条項を有することを踏まえての回答かもしれませんが、あまりにも低い数字に、「無関心、無抵抗ならば侵略も容易と勘違いする国も出てくるのでは」と危機感を抱いた筆者。



隣国である大国中国の「はい」は88.6%と高いため、他人事ではいられない。
いつ誰が世界価値観調査の対象となるかはわからないが、国民一人ひとりが国防意識をもち、祖国を守る意志を世界に見せれば、それもまた抑止への一歩となるのではないか。
そんなことを考えながら、日常へ戻る帰路につきました。
脚注
- 前線の歩兵隊や部隊の展開を、パラシュート降下などではなく、ヘリコプター空輸で行う作戦。 ↩︎
- パラシュートを低高度で開傘する方式。 ↩︎
- 日米の先進技術を結集して生まれた航空自衛隊の戦闘機。 ↩︎
- 20mm機関砲・対戦車ミサイル等が搭載されており、遠距離からヘリコプターおよび軽装甲車に対して射撃することが可能。 ↩︎
- 12.7mm重機関銃を搭載することができ、比較的遠距離から軽装甲車に対して射撃することが可能。人員の輸送等多用途で運用している。 ↩︎
- スウェーデンで開発された携行タイプの火器。主に対戦車火器として使用するが、照明弾や発煙弾も発射可能。 ↩︎
- 牽引式重迫撃砲。日本では1992年から豊和工業によりライセンス生産が行われている。 ↩︎
- 赤外線とレーダーを用いた捜索・評定機能により、効率的に目標を探知・対処可能な誘導弾 ↩︎

